東京都産業労働局 tokyo reporter 島旅 & 山旅

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青ヶ島

東京から360キロ、伊豆諸島最南端の有人離島。日本で最も人口の少ない村(170人、2014/01/01*)、あおがしま。内輪山223m、外輪山423m、島は二重のカルデラ火山。生前に見ておきたい13の絶景**に、日本で唯一選ばれました。伊豆&小笠原の離島へ、多摩へ。青ヶ島(東京都 青ヶ島村)
椎名誠

椎名誠

作家。1979年より、小説、エッセイ、ルポなどの作家活動に入る。
趣味は焚き火キャンプ、どこか遠くへ行くこと。

1日目

ヒトを寄せ付けない島

ヒトを寄せ付けない島

伊豆七島を全部行ってみよう、と若い頃思い、着実に実践してきた。しかしまだ利島と青ヶ島だけ未踏である。そこでこの機会にいちばん遠くしかもなかなかヒトを寄せつけない、といわれている青ケ島まで行ってみることにした。欠航の多い連絡船「あおがしま丸」だがその日は出航するという。ようしチャンスとばかり乗り込んだ。目的の島まで約四時間。

海にはさして大きな波はないが、台風の置き土産である「うねり」がまだ残っている。

やがて青ケ島が見えてきた。遠目からは波間からいきなり飛び出して屹立しているかんじである。そのむかし火山の隆起でできた島、という歴史をその形がわかりやすく証明しているようだ。

殆ど絶壁だけがまわりを取り囲んでおり、接近するものはすべて拒絶しているような、いささかおどろおどろしい「魔の島」のイメージだ。(写真:椎名 誠)
青ヶ島、上陸

青ヶ島、上陸

港は南向きにひとつしかない。接近していくにつれてわかってきたのは、波高はそう巨大ではないものの、うねりが直接ぶつかっているので桟橋のまわりは常に海面が大きく複雑に上下しているようだ。こういう条件のところで桟橋に船を横づけするのは並大抵ではないだろう、とシロウト目にもわかる。

船は激しく揺れながら時間をかけてじりじり接近していくが、ときおりうねりによっていきなり左右に大きく傾く。二、三度船体が殆ど斜めになったようだった。なんとかブリッジをつけたが、桟橋の上の係員が十人ほどで抑えても、船と一緒ブリッジが三メートルほど左右に動いている。ゆさぶられてブリッジから落ちたら桟橋と船に挟まれて死ぬしかないだろう。脱出するようにしてあおがしま丸から降りることができた。

上陸成功。しかし、そのあと知ることになるのだが、本当の成功は、この島での用事がすんで帰路の船に乗れることができたらのこと、という荒海の中に浮かぶ孤島の厳しい現実だった。(写真:椎名 誠)

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2日目

ひんぎゃの釜

ひんぎゃの釜

青ケ島は二重のカルデラで、その形は外輪山のてっぺんに行けば分かりやすく目で確かめられるという。

その日は外輪山の内側に入っていってキャンプの設営をした。外輪山の内側の真ん中には冗談のようにまん丸のもうひとつ内側のカルデラがあり、緑の草木に覆われている。あの荒れた海から内側に入ってきてのこの鬱蒼とした森林と湿った熱気はちょっとしたロストワールドの気配だ。

キャンプ地の近くではあちらこちらで地面から「ひんぎゃ」と呼ぶ蒸気の白煙が吹き出しており、それを利用した天然地熱釜があっていろんな料理に使われている。

この地熱を利用した海水からの「塩づくり」がなされている。たった一人の女性が五十度以上になる塩づくりの素朴な製作所で作業をしていた。時間と手間をかけてつくられた塩をもらったがとてもうまい。ひんぎゃの釜でタマゴを茹で、その塩をかけて食べる。疲れた体に塩がことのほか効いてくるようだ。

3日目

東京都の隠れ島

東京都の隠れ島

ここはまさしく東京の辺境だ。一千万人の東京都民のうち何人がこの島を知っていて、何人がこの島を見ただろうか。そういう意味ではこの島は東京の「隠れ島」だ。

翌日、島でもっとも高い「大凸部」の最高地点四二三メートルに登った。外輪山の一点であるから外側の海と内側の二重カルデラがくっきり見える。外国でもこんな極端な光景は見たことがない。苦労してやってきたが、この光景を見ることができただけでも満足だった。